呼吸器

解剖

  • 気管支:軟骨
  • 近位細気管支:Goblet細胞
  • 終末細気管支:漿液細胞、Club cell
  • 呼吸細気管支:肺胞マクロファージ、繊毛細胞
  • 肺胞:肺胞細胞I, II、肺胞マクロファージ

 

呼吸肺胞細胞 I:肺胞上皮を構成

呼吸肺胞細胞 II:肺胞上皮の修復(肺胞細胞 Iに分化する)とサーファクタント分泌

ゴブレット細胞:ムチン分泌

Club細胞:細気管最終端に位置し、繊毛細胞に分化する

繊毛細胞:Goblet細胞よりも最も遠位にあることで、粘液をすべて排泄する

気道のクリアランス

大きい粉塵:気管、気管支、近位細気管支において、粘液分泌とともに排出される。

小さい粉塵(2μm以下):呼吸細気管支、肺胞まで到達し、マクロファージにて貪食され、炎症、線維化を呈し、塵肺となる。

気道抵抗

肺胞レベルの末梢においては総断面積は非常に大きいため、気道抵抗はゼロに近くなる。

中枢側の気道では気道断面積が気管支中部までは分岐に従い減っていくため、気道抵抗が上昇する。

Quantitative study of bronchial mucous gland enlargement

低酸素血症の鑑別

肺胞ー動脈酸素分圧格差(A-a DO2)正常=5-15mmHg

低換気(肥満、神経疾患)、高高度

A-a DO2拡大

右ー左シャント(シャント疾患、肺水腫)、V-Qミスマッチ=dead space ventilation(肺塞栓、COPD)、拡散障害(間質性肺疾患)

CO2の拡散は酸素よりも20倍早いため、拡散障害はまず正常CO2分圧の低酸素血症となる。

低酸素血症で生じた2次性の多血症PaO2が65mmHg以下の場合に生じる。それ以上の場合は脱水等、他の原因を考える。

人工呼吸、集中治療

挿管後のもっとも信頼できる指標は、カプノグラフィ。意識下挿管時はケタミンを用いる。

ICU治療後の後遺症 Post Intensive care syndrome PICSとしては、精神障害(抑うつ、PTSD、不眠等は5年以内はリスクがある)、認知機能(記憶障害、集中障害は7−8年続く可能性がある。)身体的(日常生活へのサポートは2−3年に渡り必要な可能性がある)

抜管後の気道狭窄音

喉頭浮腫の可能性があり、すみやかな再挿管を考慮する。抜管前のステロイド投与は喉頭浮腫のリスクを低下させる。

肺塞栓症

V/Qスキャンは感度が高いわけではなく、臨床的に疑わしい際は、V/Qスキャンが陰性であっても肺塞栓は否定できない。15%の症例に発熱は伴い、他の臨床症状に変化がなければ抗生剤は不要である。

右室負荷により新規右脚ブロック、TRが認められる。

IVCフィルターの適応は抗凝固療法による合併症もしくは禁忌状態、抗凝固療法の有効性が乏しい時である。

慢性呼吸不全時の呼吸トリガー

中枢性ケモレセプターはPaCO2の上昇を鋭敏に感知して呼吸の深さと回数を刺激する。慢性呼吸不全でPaCO2が慢性高値時には、中枢ケモレセプターは鈍化しており、低酸素血症が呼吸のドライバーとなる。

頸動脈小体に低酸素血症を感知する受容体があり、重度の低酸素時(PaO2が60mmHg以下)のみ呼吸刺激を行う。そのため、慢性呼吸不全患者に酸素投与を行うと、呼吸回数が低下しうる。

慢性呼吸不全時の酸素投与

慢性呼吸不全患者が酸素投与によりCO2貯留する主原因は、もともと低酸素血症によって肺血管が収縮して低換気部の血流を減らしていた状態が、酸素投与によって血管拡張し、V-Qミスマッチが増えることである。

呼吸ドライブの消失による換気量低下は主原因ではない。

新生児呼吸障害

新生児期の呼吸障害による低酸素血症は、網膜の低酸素状態をきたし、その結果、VEGFが亢進し、網膜血管新生による網膜症を呈しうる。失明のリスクとなる。

未熟児無呼吸

20秒以上の無呼吸で通常、37週以降は改善する。

周期性呼吸

5−10秒程度の周期的な無呼吸。刺激なしに再度呼吸する。6ヶ月まで見られる。

新生児一過性多呼吸

肺液の吸収が遷延することによって生じる。リスクファクターは帝王切開、未熟児、母胎の糖尿病。レントゲンは過膨張となり、呼吸音は清。一時的に酸素を必要としても、通常自然改善する。

クループ

パラインフルエンザ ウイルス感染。6ヶ月から3歳時に多い。

吸気時ストライダー、犬吠様咳嗽。

治療は重度の場合(安静時ストライダーある場合)は、ステロイド投与と吸入エピネフリン。

咳喘息

乾性咳嗽が主要な症状で、特に運動、アレルゲンへの暴露で誘発される。

喘鳴は無いことがある。

喘息疾患治療

喘息の標準治療はベータ吸入とステロイド吸入
急性増悪時は短時間作用型β吸入を行い、それでも症状が続く場合はステロイド全身投与を行う。

 

難治性喘息治療時は

Cromoglycates: 肥満細胞からの脱顆粒を抑制する

Omalizumab: 抗IgE抗体。抗原がIgEと肥満細胞に結合するのを防ぐ
を用いる。
 
他の治療として
    • 抗IgE抗体(Omalizumab):気道炎症を抑制する
    • ステロイド:肥満細胞の遺伝子転写阻害
    • Cromoglycates:ヒスタミンの分泌阻害
抗ヒスタミン薬、
    • 抗ヒスタミン薬
    • Zileuton:アラキドン酸からロイコトリエンへの反応阻害
アンチロイコトリエナースとして、Zileuton、Montelukast等
  • 抗ロイコトリエン(Montelukast、Zafirlukast):

アレルギー性肺アスペルギルス症

喘息もしくは嚢胞性線維症のある患者がアスペルギルス抗原に感作することにおより発症する。激しいIgEおよびIgGによる抗体反応。再発性の増悪(発熱、倦怠感、褐色痰を伴う咳、喘鳴)時に疑う。特異的アスペルギルスIgE抗体価が上昇する。好酸球増加。アスペルギルス抗原によるスキンテスト陽性。

治療は炎症応答を止めるためのステロイド投与およびアスペルギルス抗原量をへらすためのイトラコナゾールもしくはボリコナゾール投与の両者が必要となる。

COPD

FEV1<40%と高齢は予後に影響する因子。

COPDの急性増悪時に、膿性痰、痰量増加、呼吸不全の悪化のうち2つがあれば抗生剤使用が推奨される。

COPDの20−40%に肺性悪液質が生じ、体重減少を呈する。

嚢胞性繊維症 cystic fibrosis

ATP作動性膜貫通蛋白であるCFTRの異常。70%のケースでは翻訳後のプロセッシングの障害により、CFTRの折り畳みが不良となり、細胞内のプロテアソームで分解されてしまい、膜タンパクとして発現できないことが原因となる。

塩分喪失が生じやすく、低Na血症から意識障害を呈する場合もある。

脂溶性ビタミンAの吸収不良による欠乏から、膵の細胞分化異常から扁平上皮細胞が生じうる。

繰り返す副鼻腔、気道感染。濃縮された腸液による腸閉塞(新生児において胎便イレウスとなる)、膵不全、糖尿病、男性不妊症。

ブドウ球菌、緑膿菌を含む抗生剤治療が必要となる。

α-1アンチトリプシン欠損症

好中球のエラスターゼの阻害の働きのα-1アンチトリプシンが欠損することで、無制御のエラスターゼによる組織破壊。若年発症の閉塞性肺疾患。半小葉性肺気腫となる。(COPDは小葉中心性)

肺気腫疾患であるため、total lung capacityは増加、FEV1は低下する。

 

肺がんのスクリーニング

50−80歳の喫煙者および禁煙後15年以内のものは、一年に一回のCTによる肺がんスクリーニングを受けることにより、死亡率が減る。

Screening for Lung Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement

孤発性の肺結節影

0.6cm以下は悪性腫瘍は否定的であり、フォローアップも一般には必要ない

0.8cm以上は癌の可能性(5%以上の可能性)あり。

再発性の肺炎

同一部位に再発を繰り返す肺炎は、気管支閉塞型悪性腫瘍の可能性があり、CTおよび気管支鏡検査による検査が必要となる。

肺小細胞癌

最も悪性度の高い肺がん。喫煙患者に多い。某腫瘍症候群としてSIADHクッシングランバートイートン症候群を呈しうる。神経内分泌マーカー(Neural cell adhesion molecule NCAM=CD56クロモグラニン)が陽性となる。EML4-ALK遺伝子異常を伴うものが数%あり、その場合、分子標的薬imatinibの効果が高い。この遺伝子異常はCMLでも認められる。

肺扁平上皮癌

ときに高カルシウム血症(副甲状腺ホルモンの産生亢進による)

肺大細胞癌

胸壁浸潤した場合、疼痛を伴う。

肺過誤腫

ポップコーン様の石灰化。良性の腫瘍

肺線維症

慢性に進行する肺の線維化。肺胞細胞 Iの喪失と肺胞細胞 IIの過形成。慢性的な炎症がTGF-β、platelet-derived growth factor (PDGF)fibroblastic growth factor (FGF)血管内皮増殖因子(VEGF)を刺激し、線維芽細胞や筋繊維芽細胞の形成を促す。

治療として用いられるのは、Pirfenidone(TGF−β阻害薬)、ninedanib(PDGF、FGF、VEGF阻害薬)、

慢性気管支炎

慢性気管支炎では粘液の分泌増加と気管支壁の肥厚による狭窄が特徴所見となる。粘膜下の気管支腺の過形成が肥厚の主原因であることから、基底膜から軟骨までの距離で粘液腺の高さを割ったものがREIインデックスとして用いられる。

気管支拡張症

再発性の感染、膿性痰、喀血

アスベスト

気管支癌が悪性中皮腫よりもアスベスト関連癌としてリスクが高い。

悪性中皮腫はサイトケラチンが陽性の紡錘状細胞の悪性増殖。トノフィラメントも認める。

胸膜肥厚性病変は、含鉄小体ferruginous bodyを認める。

悪性胸膜中皮腫

アスベスト暴露がリスク。暴露後15−30年後に発症しうる。

胸水が多量に貯留しうる。胸膜の石灰化、飛行、腫瘤。胸水細胞診の感度は35%。

緩和的治療が大半をしめ、根治率は低い。予後は9−13ヶ月。

シリカ肺 Silicosis

シリカ片によりマクロファージの機能が障害され、アポトーシスが促進するため、結核への罹患が増加すると考えられている。

 

サルコイドーシス

リウマチ膠原病へ

肺移植後の拒絶

超急性:フィブリノイド壊死

急性:小血管周囲や細気管支粘膜下へのリンパ球浸潤

慢性:小気道の粘膜下へのリンパ球浸潤。

 

脳死後の臓器保護

中枢性尿崩症に対してデスモプレシンおよび補液、交感神経機能低下による低血圧に対して昇圧剤、低体温に対して保温を行い、臓器を図る。

抗凝固療法は適応とされない。

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