サージカルルーペ、ライト、ビデオの選び方

初心者のルーペの選び方

最近では内視鏡手術や透視下手術も発展してきており、直接目視下に手術をする機会は減っているかもしれません。しかしまだまだ直達的手術は外科の王道で、何か生じた際には開腹もしくは開胸を行い修復をしなければなりません。さて、直達手術で微細な構造物、血管等を手術する際はサージカルルーペを用いざるを得ない事が多いです。このサージカルルーペですが、物によって得られる結果が大きく異なります。このページではキーラー社のスーパーガレリアン、デザインフォーヴィジョン社のパノラミック、Xenosys社のヘッドライトやサージカルカメラについてまとめてみました。

Keeler社

私はこれまではイギリス キーラー製のスーパーガレリアンを用いてきました。これは跳ね上げができるルーペで、例えば、手術のメインの部分でのみルーペを下げて繊細な縫合を行い、その他の部分ではルーペを頭の方へ跳ね上げて、広い視野でスムーズに手術を行う事ができるものです。とくに初学者は手術全体のフローを学ぶ必要があるため、ルーペばかりで細かい所を見ていると学習が遅れると私は思っています。

より幅広い視野が得られるスーパーガレリアンは3.0倍しかありませんでしたので、倍率は3.0倍を選択しました。(通常、研修を始める外科修練医は2.5-3.0倍を選択することが一般的です。)

ルーペの焦点距離

焦点距離ですが、私は手術台にかじりつくように手術をするのは好まないので、作業距離500mmを選択しました。それでもまだ腰を曲げる事が多かったため、外付けのディオプターレンズ M0.25を足して焦点距離を571mmに延長しました。

日本のキーラーの代理店キーラーアンドワイナ

ちなみにワイナーというのは、他の外国メーカー等の名前から由来しているわけではなくて、社長さんのイニシャルから文字ったと私は想像しています。

他にも色々なメーカーがルーペーを販売しております。実際の選択としては勤めている病院の上司達が持っているものを真似して買うことが多いのではないでしょうか。すでに病院に出入り業者が整っていたりして、ルーペのメンテナンスなどでその方が色々と便利なことが多いと思います。そういう意味で、弟子入りしたならば、弟子入り先の作法に従うのが最初は良いと思います。

焦点距離を伸ばすと視野が広がる

焦点距離を伸ばすと、縮こまった腰が広がるだけでなく、視野が広がります。これは焦点距離延長の大きなメリットになります。実際、私のキーラーのスーパーガレリアンは視野径100mmから130mmにまで広がりました。

そしてこの視野というのが、かなり手術操作の効率性に影響します。実際に手術中に縫っている部分に対しては2−3cmの視野さえあればいいですが、糸さばきを上手く行い絡ませない事、他の部位の変化に気づいたりして異変を察知する事、助手が何をやっているかを把握してより良い術野展開をする事、等のトータルでの手術コントールをするためには、細かい吻合をしている際にも広い視野必要です。

もちろんルーペから目をそむけて周りを見渡すことは可能ですが、ルーペと行き来を繰り返すのは調節のため目に少し負担がかかり、若干のタイムラグが生じます。

サージカルルーペ キーラー Design for Vision

デザイン フォー ヴィジョン

Design for Visionはアメリカのルーペ会社で最も有名なメーカーです。ここのルーペは基本的にメガネに埋込式です。ガレリアンタイプとケプラー方式の筒型のもの出しています。この筒型タイプに最近、パノラミックという視野が非常に広いタイプが追加されました。私は早速これに切り替えました。拡大率は3.5倍、作業距離は570mmと以前と同様の距離を引き継ぎ、発注。待つこと1か月ほどで手元に届きました。メーカーホームページに掲載されている視野径は焦点距離が不明ですが、111mmとされています。私の場合は作業距離570mmのため、視野も広がり、3.5倍と拡大率が上がったにも関わらず、およそ160mmとかなり広い視野が得られました。個人的な感想としては、前述の点において、手術習熟・操作は著しく効率性があがりました。

サージカルルーペの視野 キーラー Design for Vision

実際に視野を図って比較してみました。もちろん私の瞳孔間距離や実際の作業距離にも影響されているため、私の超個人的な私見になります。焦点距離とルーペのデザインによってかなり視野が異なることがわかると思います。

Design for Visionのホームページ

サージカルライト

術野を照らすライトも多くのメーカーが販売しています。私が使っているのは韓国メーカーのゼノシス Xenosysです。これも勤め先が使っていると、充電器やバッテリーを共有することができるため、同僚、上司を参考にすると良いと思います。メーカーにより明るさが様々ですが、この明るさに関してはかなり個人間で満足度に差が出ると思います。また、他の人がより明るいものを使っていると、目がそちらに慣れてしまうため、自分の明かりは暗いと思っています。しかし明るすぎるライトは眼精疲労につながり、それを長時間繰り返し集中してい見る影響については私自身わかりませんが、一般常識から考えると望ましいものではないと思います。経験上、Xenosysの38000Luxの明るさがあれば、暗さに困ることはありませんでした。

安物に注意

病棟やICUでの処置用に安物を使ったことがありますが、大事な点はLEDライトの辺縁が明瞭であるかだと思います。レンズ等にて光が散乱していないことは、光が集まっているという点と、照らしている所とない所でコントラストがつくという点で重要だと思います。アマゾン、Ebay、Ali Express等で買う事はお金と時間の無駄になる可能性が非常に高いです。

Xenosysのライト

LED自体がシリーズによって異なっているようですが、そのLEDを収める照器は3タイプあります。下記写真はL2Sシリーズです。

Xenosys LEDライト メディカルプログレス

個人的にLuxと照射径を計算してみた結果、分かったこととしては、同一シリーズ内ではLED自体は同一のものを使用しており、バッテリー消費効率自体は変わらない。そして、照射面積に比例して照度が変わるということです。写真の左はしは照射径66mmで、右は照射径82mmです。基本的には右の標準タイプ(LLM82)の80%の径になったものが、左のタイプ(LLM66)です。LED自体は同一なので、照射面積に反比例して、右のもの(LLM82)は左のもの(LLM66)よりも80%X80%=64%(半径の二乗)のLUXに落ちてしまっています。逆に左のもの(LLM66)は右端(LLM82)の1.56倍の明るさを持っています。

サージカルルーペ 視野 キーラー Design for Vision Xenosys ゼノシス LED メディカルプログレス ルーペ

ライトの照射範囲は?

先程のルーペ視野にライトの大きさを実際に照らしてみて当てはめてみました。66mm径のライトでも実際には120mmの光径が得られており、十分な広さとわかりました。実際の手術では、手術後半ではバッテリーがなくなることがあり、最後の止血の際に使えないとうのはストレスがたまりますので、私自身は66mmをおすすめします。最新のL2S15のヘッドライトでは中レベルで44000LUXが得られますので、十分と思います。

サージカルカメラ

さて、最後にサージカルカメラについて書きたいと思います。録画のできるサージカルカメラシステムはこれも各社が販売しておりますが、大きく分けてパソコンを必要とするタイプとしないタイプに別れます。前述のアメリカのDesign for Vision社はパソコンを必要とするタイプになり、パソコンを準備する必要と有線で接続されている必要があります。またフットペダルで操作するという点が取り回しを悪くしています。Xenosysは後者のタイプになり、パソコンは不要でHDMIケーブルかWifi経由でビデオを送信する事が可能です。手術はシンプルで雑念が入らないのが一番ですので、私個人としてはXenosysに軍配が上がると考えています。

LOOKSCAM

LOOKSCAMのビデオ撮影範囲を先程のLED照射範囲と共にプロットしてみました。日本では66mm径のLEDしか選択できませんが、メーカーは82mmも含めて3もしくは4種類のLEDをラインナップしています。このビデオ撮影範囲を考えるに、66mm径で十分と思います。またLOOKSCAMの弱点はバッテリーの持ち時間で、LOOKSCAMで3時間30分、LOOKSCAM2で4時間20分となります。しかし、これはLEDのレベルを下げることによって、1段さげで6時間20分にまで伸ばす事ができます。私はこのことからも66mm径が最適な選択と感じました。

ちなみにLOOKSCAMとLOOKSCAM2では手ブレ補正、バッテリー容量、オートフォーカスで違いがあり、それぞれかなり重要な部分のアップグレードだとおもいますので、予算があればLOOKSCAM一択だと思います。

Xenosys サージカルカメラ メディカルプログレス ルーペ

日本のXenosys代理店 メディカルプログレス

最後に

いかかでしたでしょうか?なかなかルーペ、ヘッドライト、サージカルカメラについて実際の視野等について比較、分析したサイトはありませんでしたので、参考にして頂ければ幸いと思います。ホームページ維持管理費が赤字なので、もしよければ、Google広告をクリックしてもらえると、とてもありがたいです。

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