肝炎ウイルスについて

HBV Virus

部分的2本鎖のDNAウイルス。急性感染の95%が完全治癒に至る。慢性炎症により肝細胞癌を惹起するが、下記特徴がある。

  • HBVウイルスのDNAがホスト細胞に組み込まれる。組み込みが増殖や分化の部分であった場合、腫瘍化が促進される。
  • HBVは腫瘍抑制的蛋白p53の妨害する蛋白HBxを生成する。
  • ワクチンにより抗HBs抗体が産生され、これによりHBVの肝細胞への接着、侵入を防ぐことができる
  • 抗HBc抗体の単独陽性は、急性B型肝炎のウィンドウ期、急性B型肝炎からの回復後、慢性B型肝炎の慢性期に認められる。抗HBc IgM抗体を測定することで急性B型肝炎のウインドウ期を診断できる。 

Role of hepatitis B virus DNA integration in human hepatocarcinogenesis.

HCV virus

一本鎖のRNAウイルス。6以上のゲノムタイプがある。RNAの核酸分解酵素である3’→5’エキソヌクレアーゼにはプルーフリーディング機能がないため、複製時に多くのエラーが生じ、多くのsubspeciesが同時に感染することになる。

感染経路は汚染針による薬物注射、感染血の輸血が主な経路で、性的感染は稀である。

 

急性ウイルス性肝炎

汎小葉性リンパ球性炎症。まだらな範囲での細胞障害、色白い膨張した細胞。肝細胞表面にウイルス抗原が提示されることによる細胞障害性TセルCD8陽性T細胞)によるアポトーシス(HBVウイルス自体に細胞傷害性はない)。アポトーシス細胞は好酸性、好塩基性に染まる円形細胞となる(Councilman bodies)。HAVウイルス感染は蒸し牡蠣もリスクとなる。HAVは通常自然軽快。

慢性ウイルス性肝炎

B型肝炎=肝細胞のすりガラス様変化細かい顆粒びまん性で均一薄ピンクの好塩基性の細胞)、C型肝炎=多量の脂肪を含む肝細胞

C型肝炎薬のSofosbuvir(RNAポリメラーゼ阻害)やLedipasvir(NS5A)は感染細胞内でのHCVの複製や組み立てを阻害する。97%以上の治療成功率。カップル間の性交渉のための接触予防は不要とされる(感染率0.1%以下)。慢性C型肝炎に急性A型肝炎、B型肝炎が合併すると、急速な肝不全となるため、予防摂取を行う。

HDVウイルス感染

HDVウイルスが肝細胞に感染し、増幅するためにはHBVウイルスの表面抗原にて覆われなければならない。

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