消化管の腫瘍性疾患

上部消化管症状

60歳以上は上部内視鏡検査

60歳以下はピロリ陽性、もしく悪性腫瘍リスク(消化管出血、体重減少、持続的な嘔吐、進行性の症状、腫瘤触知、リンパ節腫脹)があれば上部内視鏡検査を行う。

食道扁平上皮癌

好酸球性の扁平上皮細胞。ケラチン形成(ケラチンパール)細胞間架橋。予後は一般的に不良である。タバコ、飲酒がリスクファクター。

食道腺癌

腸上皮化生(Barrett食道)の遠位部からは腺癌が好発する。

印環細胞腫

胃腺癌のタイプ。胃の広い範囲に浸潤する。印環細胞癌はその浸潤性の高さ(E-カドヘリンを失っている)から、子宮へ経腹膜的もしくはリンパ行性に転移しうる。

小腸型胃腺癌

胃腺癌のタイプ。胃内に突出する病変を形成する。

カルチノイド腫瘍

消化管(小腸、直腸、虫垂)によく存在する神経内分泌悪性腫瘍。虫垂の場合、先端にあることが多いが、基部にあることもあり、その場合、虫垂が閉塞して、虫垂炎の原因となることがある。好塩基性の単型のシート状の細胞。セロトニンの分泌亢進。尿中5-HIAAの上昇。内分泌症状に対してソマトスタチンを用いる。

ガストリノーマ

膵もしくは小腸に位置するガストリン産生腫瘍。ガストリンにより壁細胞からの胃酸分泌が亢進し、球部以遠の遠位十二指腸や小腸に治療反応不良の潰瘍形成する。通常、胃酸分泌を抑制するセクレチンが、本疾患では逆にセクレチンが胃酸分泌を亢進させる点で、他の高ガストリン血症を呈する疾患(萎縮性胃炎)と鑑別する上で有用である。Ca値、プロラクチン値を確認することでMEN1型を除外する必要がある。

大腸ポリープ

良性ポリープは、過形成(最多)、炎症性(潰瘍性大腸炎、Crohn病に伴う等)、粘膜下ポリープ(粘膜下の脂肪腫やリンパ集積等によるもの)。悪性ポリープは腺腫様ポリープ(その中でも絨毛様管状様よりも、より悪性になりやすい)、鋸歯型ポリープである。また、サイズからは1cm以上は悪性化のリスクとなり、4cm以上は再高リスクに分類される。

 

2cm以上のポリープ切除、腺癌を伴うポリープ切除後は2ヶ月から3−6ヶ月以内のフォローアップカメラが必要。

1cm以上のポリープ切除後、高度異形成アデノーマ、3−10個の腺腫切除後は3年毎のフォローアップ。

1−2個の1cm以下のポリープ切除後は5毎にフォローアップ。

結腸癌

右側(上行結腸等)の結腸癌は、腸の管径が比較的大きく、便も水様であるため、便秘になりにくい。腫瘍は大きく腫瘤として成長し、腸管内に突出病変を形成いしやすい。そして出血性病変となりやすく、貧血、血便で見つかることが多い。

一方、左側(S状結腸等)では、比較的腫瘍は小さく、腸管壁内を全周性に浸潤することが多い。そのため、全周性浸潤等で便秘や腸閉塞等で発症することが多い。

結腸ポリープの出現はAPC遺伝子異常、ポリープのサイズ増大はKRAS遺伝子異常が関与し、結腸ポリープから腺癌への変化はTP53遺伝子の変異が関与する。上皮増殖にはシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)によるプロスタグランジンが関与しているため、COX阻害薬のアスピリンの低用量服用は結腸腺腫、腺癌リスク低下につながるとされる。腫瘍マーカーCEAにて治療経過のモニタリングを行う。

Aspirin for the chemoprevention of colorectal adenomas: meta-analysis of the randomized trials.

大腸がん予後因子

基底膜や固有層浸潤はCarcinoma in situであり、予後は良い。

腫瘍へのリンパ球浸潤は免疫応答を反映し、予後は良い。

局所リンパ節への転移は5年生存率50−80%の指標となる。

大腸がんスクリーニング

リスク因子なし 一等親に60歳以上での大腸がんあり

スクリーニングは50歳で開始

下部内視鏡を10年毎

潜血検査を毎年

CTを5年毎

S状結腸カメラを5年毎

リスク因子あり

一等親に60歳以下での大腸がんあり

2人以上の1親等に大腸がん/腺腫が年齢を問わずあり。

40歳もしくは親族が癌になった年齢の10年前に下部内視鏡検査開始。

3−5年毎に検査を繰り返し

*一等親 First degree relatives=親、兄弟、子

大腸がんの危険因子

家族歴、ポリポーシス症候群、炎症性腸疾患、アフリカ系人種、アルコール摂取(おそらく葉酸欠乏が関連)、現在の喫煙、肥満

腸炎関連大腸がん

若年発症、非ポリープ病変から発症、遠位よりも近位大腸に、多発傾向、ムチン様もしくは印環細胞様で未分化、早期にp53の変異、晩期にAPC遺伝子変異

一方、特発性の大腸がんは

60才以上m,ポリープ病変から発症、近位より遠位大腸に、孤発性、高分化、早期にAPC遺伝子変異、晩期にp53変異

Lynch症候群=遺伝性非ポリポーシス大腸癌

MSH2、MLH1、MSH6、PMS2遺伝子異常。非ポリープ性の若年性の大腸癌。大腸癌のリスクは50−80%。子宮内膜癌、卵巣癌の若年発症。

家族性腺腫性ポリポーシス

APC遺伝子異常。腺腫性ポリープを呈する。大腸がんのリスクは未治療の場合100%、上部消化管腫瘍、甲状腺腫瘍、デスモイド、Osteoma、脳腫瘍。

Peutz-Jeghers症候群

STK11異常。大腸がんのリスクは39%。上部消化管腫瘍、膵臓がん、乳がんのリスク。

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