常染色体陽性遺伝
構造的異常の疾患が多い。父母片方から異常遺伝子を受け継いだ場合でも発症。
常染色体劣性遺伝
酵素欠損の疾患が多い。父母から異常遺伝子をそれぞれ受け継いだ場合に発症。
ミトコンドリア遺伝
どちらの性の子供も、母からミトコンドリア遺伝子を受け継ぐ。酸化的リン酸化に関連する疾患が多い。
ミトコンドリアの遺伝情報は母系遺伝子によって規定されるが、ミトコンドリア自身もDNA遺伝情報を持っており、細胞内の数百のミトコンドリアがそろぞれ異なった遺伝子を持っている(heteroplasmy)。そのため、ミトコンドリア遺伝性疾患であっても、症状の発現に差がでる。ミトコンドリアDNAは14種類の蛋白質、ミトコンドリアDNAのためのリボソームRNA、トランスファーRNAをコーディングしている。
性染色体優性遺伝
疾患ある男性から生まれた女性は100%必ず発症する。
性染色体劣性遺伝
男性で発症し、女性はキャリアになることが多い
多遺伝子遺伝
- アンドロゲン性脱毛
- てんかん
- 緑内障
- 高血圧
- 虚血性心疾患
- 統合失調症
- 2型糖尿病
真核生物のRNAの合成と機能
RNAを合成するポリメラーゼ | 合成されるRNA | 機能 |
RNA ポリメラーゼ I (核小体内のみに存在) | 18S, 5.8S, 28S リボソームRNA | リボソームを形成 |
RNA ポリメラーゼ II | *メッセンジャーRNA **small nuclear RNA ***Micro RNA | *リボソームによって蛋白を形成 **mRNAのSplicingと転写調整 ***gene silencing |
RNA ポリメラーゼ III (核小体外) | *Transfer RNA **5S リボソームRNA | *アミノ酸に分子結合を与える **60Sリボソームサブユニットの一部 |
RNAプライマーゼ(RNAポリメラーゼの一種)は短いRNAプライマーを合成する。
核小体 nucleolus
核の内部の好塩基性円形部。リボソームRNAの転写やリボソームの構築が行われる。多数の染色体に分散しているリボソームRNA前駆遺伝子が、RNAポリメラーゼIによってリボソームRNAに転写され、リボソームが形成される。
リボソーム
rRNAと蛋白質からなる、蛋白質合成の場。
DNAジャイレース (トポイソメラーゼII)
2本鎖DNAのスーパーコイルを除去する働き。
ヘリカーゼ
トポイソメラーゼII(ジャイレース)の後に作用し、DNAの2本鎖を解く働きをする。これの機能不全によりDNの損傷修復が障害される。(Bloom症候群、等)
一本鎖DNA結合蛋白
コイルがとれたテンプレート鎖の安定化させる働き。再びねじれるのを防ぐ。
DNAリガーゼ
オカゼキフラグメントを結合させる働き。リーディング鎖では5’→3’方向へ連続的に複製が行われるが、対となるラギング鎖では逆の方向になるため、オカザキフラグメントを形成しながら、リガーゼで結合するという不連続な複製が行われる。
DNAポリメラーゼ
DNAの複製に関与。核内に存在。
DNAポリメラーゼIは5′-3’エクソヌクレアーゼ活性がある。これはRNAプライマーを取り除き、DNA配列の損傷を修復する働きがある。Proofreadingも行う。
DNAポリメラーゼIIIは5′-3’DNA合成と3′-5’エクソヌクレアーゼ活性。proofreadingも行う。RNAプライマーは取り除くことはない。
CAATとTATA配列は転写部の上流に存在しプロモータ部を形成する。転写因子やDNAポリメラーゼIIの結合部位となることで、転写の開始、促進の働きをする部位となる。
テロメラーゼ
テロメアは染色体の3’端に存在し、DNA複製の度に短くなっていくTTAGGGコードである。一定の短さになるとTP53等が機能し、成長の停止、細胞死となる。テロメラーゼはテロメアを補う働きがある。生殖細胞等を除き、通常の細胞には存在しない。がん細胞の90%以上で発現している。また、TTAGGGコードは増殖性の高い幹細胞(造血幹細胞、皮膚基底細胞等)では非常に長くなっている。
DNAの複製
2本鎖DNAが複製フォークで1本鎖に分けられ、DNAポリメラーゼによりRNAプライマーの後ろに5−3方向でDNAが複製され、複数の岡崎フラグメントが作られる。RNAプライマーが除去され、すべてのフラグメントが結合すると、複製が完了する。
Kozak配列
(gcc)gccRccAUGGのmRNAの配列部が蛋白合成時の翻訳の開始に関与している。
エンハンサー、プロモーター
エンハンサーは対象となるDNA codeの上流、下流、もしくはイントロンのどこにでも存在でき、codeの上流にあるプロモーターにエンハンサーが結合することで、転写を促進する。
染色体
染色体は、DNAがヒストン2-4を内側のコア、ヒストン1を外側のコアとして巻かれた、クロマチンファイバーとなったものである。
DNA障害
紫外線:ピリミジンダイマーの形成
化学物質暴露:脱アミノ化
DNAインプリンティング
片親からのDNAが発現するようにS-adenosyl-methionine(SAM)を用いたメチル化によって遺伝子の発現調整が行われることをインプリンティングという。Pradar-Willi症候群等。
表現促進 Anticipation
トリプレット病(ハンチントン舞踏病、フラジャイルX、筋強直性ジストロフィー、フリードリヒ失調症等)では、卵子形成時より精子形成時の方が、異常トリプレットが早くたくさん作られるため、父性遺伝で発症した児の方が、症状が強く、早期に出現する。
連鎖不均衡 linkage disequilibruim
計算された確率と異なった確率で、遺伝子の組み合わせが存在すること。
DNAの異常修復 塩基除去修復
Silence | 同じアミノ酸をコード |
Missense | 異なるアミノ酸をコード |
Conservative | 化学的に似たアミノ酸をコード |
Nonsense | premature stop codon(stop codon; UAA, UAG, UGA) |
Nonstop | stop codon内の配列だが、翻訳が継続 |
Splice site | mutation at slice site alters intron removal from pre-mRNA |
Framshift | Deletion/insertion of base causes downstream misreading |
リボソームがストップコドンに来ると、放出因子(Releasing Factor)蛋白がリボソームに結合してリボソームとmRNAとの結合を分解する。これによりアミノ酸合成がストップする。
塩基除去修復は、DNAの単一塩基異常を修復するのに用いられる。
- グリコシラーゼによる異常塩基(ピリミジンダイマー等)の検知、塩基を除去
- エンドヌクレアーゼが塩基のないAPサイトを離開。5’側に結合(nicking)
- リアーゼがAPサイトの切除を完成させる。3’側に結合。
- DNAポリメラーゼがギャップのヌクレオチドを埋める
- リガーゼがニックをシールする。
塩基除去修復の障害により、色素性乾皮症 xeroderma pigmentosumとなる。UVによりピリミジンダイマーをUV特定のエンドヌクレアーゼにより修復するが、このヌクレアーゼの欠損によることが多い。
RNA interference
マイクロRNAにより、腫瘍細胞のmRNAからの蛋白翻訳を阻害する手法。
逆転写PCR RT-PCR
遺伝子異常を伴う腫瘍等で、mRNAを定量する手法。
P body
細胞質にのみ存在し、mRNAの翻訳と分解を調整する重要な役割を担う。
tRNA
74-93のRNAヌクレオチドから構成される。特定のtRNAにより各アミノ酸が運搬され、翻訳の過程でポリペプチドが形成される。3′ 末端にCCAがコーディングされtRNAと識別される。また3’末端にアミノ酸が結合する(アンチコドン結合部の逆側の長い方)。tRNAが間違ったアミノ酸を荷なった場合、特別なtRNA分子によってプルーフリーディングされた場合はアミノ酸が加水分化されるが、それがされなかった場合は、そのまま誤ったアミノ酸が組込まれる。
RNAスプライシング
DNAから転写された一つpre-mRNA(Exon(翻訳される部分)とIntron(翻訳されない部分)を持つ)を用いて、選択的(Alternative)RNAスプライシングでExonの組み合わせを変えることで、多くの組み合わせのmRNAを生成し、その数の蛋白質を生成できることになる。イントロン終末の変異はexonの翻訳障害となり、異常蛋白の原因となる。
がん細胞はアポトーシスに関連するFas受容体蛋白の発現を変えるためにRNAのAlternativeスプライシングを行い、アポトーシスを避けるメカニズムを持つ。
ブロッティング
- ウェスタンブロッティング:蛋白の同定
- ノーザンブロッティング:RNAの同定。遺伝子発現を確認するためのmRNA検査に用いることができる。
- サザンブロッティング:特定のDNA配列を検出
- サウスウェスタンブロッティング:DNAと結合する蛋白(c-Jun、c-Fos等)を分析する。
染色体異常の検査
FISH法:蛍光in situハイブリダイゼーション。蛍光プローブをつけて染色体異常を検出する。分裂中期も間期も観察できる。
減数分裂
まず2倍体となる。その後、減数第1分裂(Meiosis I)で、父型、母型の染色体に分かれる。次に減数第2分裂(Meiosis II)で2倍体である染色体が別れ、父型母型それぞれ1本づつ入った細胞が4つできる。
多面作用 Pleiotrophy
一つの遺伝子異常により複数の異常発現(複数の臓器異常等)が生じること
ライオニゼーション Lyonization
女性のX染色体は常に片方が不活性化(重度のメチル化)され、核内の隅に位置する。
ホメオボックス遺伝子 Homeobox
適切な位置に適切な組織が発現するように調整する転写因子。通常180ヌクレオチドの長さである。
Wobble仮説
61通りのアミノ酸をコードがあるが、20種類のみのアミノ酸が合成されることから、複数のコードが1種類のアミノ酸を対応している。そのため、コードが部分的にマッチしていない場合でもtRNAが結合できるというのがWobble仮説である。
Down症
21 Trisomy。減数分裂での分離不全により生じた2倍体の染色体の受精卵から生じる。21染色体の転座やモザイク型によっても発症する。ALL、AMLのリスクが高い。十二指腸閉鎖の合併リスク。
パトー症候群
13トリソミー。頭蓋骨障害、小頭症、多指症、眼形成不良、口蓋裂。全脳の分離異常でField deficitを呈する全前脳胞症holoprosencephalyに関連する。
Marfan症候群
エラスチン周囲の鞘を形成するマイクロフィブリルを主構成するフィブリリン−1遺伝子の欠損
エーラスダンロス症候群
遺伝性のコラーゲン合成障害。エラスティックな皮膚、関節。内出血しやすい。
ミトコンドリア脳筋症
ミトコンドリアの異常により、ミトコンドリアでのATP産生に異常をきたし、代謝の活発な組織(神経、筋肉)を中心に症状を呈する。乳酸アシドーシス、痙攣、失明等。
ムコリピドーシスII、封入体細胞病 Inclusion cell disease
常染色体劣性遺伝。リン酸基転移酵素が欠損しているためにリソソームにリソソーム酵素が入れず、リソソームに物質が蓄積する病態。
コラーゲン生成
- 粗面小胞体rough endoplasmic reticulumで行われる
- ペプチドチェーンの形成(Pre-pro-α-chainからPro-α-chain)
- ビタミンC依存性のプロリン、レジン残渣の水酸化
- 水酸化鎖の糖化
- Pro-α-chainの3重鎖のプロコラーゲン形成
- プロコラーゲンがゴルジ体から細胞外マトリックスへ分泌される
- 両端のペプチドが切断(トロポコラーゲン)
- コラーゲン分子が配列して架橋がリシルオキシダーゼによって形成される。