出血時間
血小板の機能低下によって延長。凝固因子異常は関係ない。
内因系
XII、XI、IX、VIIIより共通経路X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノーゲン)、XIII
外因系
VIIより共通経路
血友病
X連鎖性、劣性遺伝(基本、男性に発症、両方のXが異常ならば女性も発症)。APTT延長、normal PT and Plt。出血時間正常。血友病A=VIII、血友病B=IX
関節内もしくは筋肉内出血(hemosiderin deposition) 治療=factor replacement(II=トロンビン), 血友病Aにはdesmopressin(DDAVP)も有効。
von Willebrand 病
もっとも多い遺伝性の止血障害。常染色体優性遺伝。
- vWFはVIII因子の血管内寿命の延長作用
- コラーゲンの露出部位(血管損傷部)での血小板接着機能。
vWFの異常により血小板機能障害とAPTT延長と出血時間の延長。血小板数は正常。治療はDDAVPにより、血管上皮からのvWF放出を促す。
尿毒素性血小板機能障害
末期腎不全の尿毒素により、血小板の機能的障害を呈する。貧血の是正、デスモプレシン投与(vWFの発現を増やす。)、透析、エストロゲン投与、クリオピリシピテート投与で改善する。出血時間延長、他採血値正常。
Thrombocytopenia
- 原因:
- Production↓= viral infection (EB, HCV, HIV) Chemo, myelodysplasia, alcohol, Fanconi, Vit B12, Folate deficiency
- Destruction↑= SLE, heparin, ITP, TTP, antiphospholipid
- Other= splenic sequestration, dilutional.
免疫性血小板減少症 Immune thrombocytopenia (ITP)
GP IIb/IIIa等の血小板膜タンパクに対するIgG等の自己免疫応答。小児の場合、ウイルス感染後に多く、急性発症で自然回復しやすい。成人は慢性経過。二次性の場合、viral infection(chronic HIV or HCV infection)が関与。点状出血、上肢下肢の紫斑。血小板のみの単独減少で他に異常を認めない。
治療= 出血がないか軽症であれば経過観察。血小板数が3万以下および出血症状があれば、IVIGもしくはsteroids
*血小板輸血を行っても、自己抗体により破壊されるために、血小板輸血の効果は無い。
血栓性血小板減少性紫斑病 Thrombotic thorombocytopenic purpura TTP
自己免疫性もしくは遺伝性もしくは妊娠性のADAMTS13減少(自己免疫性の場合はADMTS13に対する自己抗体)による血小板減少症。ADAMTS13=血漿メタロプロテアーゼが減少する事により、分割されないvWG重合体により、血栓症を呈する。発熱。血小板に富む血栓とのシェアストレスによるmicroangiopathic hemolytic anemia (MAHA) (schistocytes, helmet cells), 腎障害, 神経学的異常(stroke等)。血小板数減少はあるが、凝固は保たれる。
治療=plasma exchange, steroids, rituximab
Hemolytic uremic syndrome HUS
shigella、O157大腸菌のshiga(-like) toxinによる(多いのは不十分な加熱の牛肉)。血便、microangiopathic hemolytic anemia(毛細血管障害による血小板消費、溶血)。分裂赤血球schistocytes, haptoglobin低下, ビリルビン上昇。Coombs negative as no antibody。thrombocytopenia, acute kidney injury、凝固は保たれる。
*difference between TTP and HUS is etiology and neurologic symptom and fever (both positive in TTP)
*TTP, HUSどちらでも血栓性微小血管障害(TMA)を呈するため、腎障害を起こす。
治療=plasma exchange
Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria PNH
補体による血管内外での溶血。後天的なPIGA遺伝子の異常によりanchoring protein (CD55 and CD59) が細胞表面から欠損し、補体性溶血となる。 過凝固による塞栓症(portal, hepatic vein thrombosis=abdominal pain, cerebral vein)。幹細胞障害による汎血球減少症。慢性溶血によって腎に鉄沈着を起こす(ヘモジデローシス=近位尿細管障害、間質萎縮、皮質後側)腎内の微小血管塞栓症もあり、CKDになりやすい。
Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria.
抗リン脂質抗体症候群 Antiphospohoid Antibody syndrome (APS)
SLEの10-30%に合併。リン脂質抗体陽性。APTTはビトロで偽性延長するが、体内では血栓症を呈する。流産miscarriageのリスク。RPRやVDRLも偽陽性となる。
DVT
成人のDVTには年齢に合わせた癌のスクリーニングが必要。D-dimerはDVTを除外するのに有用。 診断にはcompression USを用いる。IVCフィルターは抗凝固療法が使用できない患者もしくは抗凝固療法が治療域にならない患者に用いる。PE can be caused by proximal/femoral thrombus。抗凝固療法は2次性(妊娠や手術等)のDVTは3−6か月の抗凝固療法、特発性であるDVTは少なくとも6か月継続し、その後の抗凝固療法を継続するかけっていする。
Factor V Leiden (FVL)
最も頻度の高い遺伝性の血栓症(白人の1−9%)。AD。V因子異常のため、V因子がProtein Cにより不活化されない。activated protein Cにも抵抗性。normal PT, APTT
Trousseau’s syndrome
migratory superficial thrombophebitis. hypercoagulopathy in malignancy. tumor release mucin that react Plt to form platelet-rich microthrombi.
Heparin-induced thrombocytopenia and thrombosis HITT=HIT type2
ヘパリン投与後5−10日で発症。未分画ヘパリンで生じやすいが、低分子ヘパリンでも生じうる。血小板第4因子(PF4)は血小板の凝集に関与する血小板から放出される蛋白であるが、ヘパリンとPF4の複合体に対するIgG抗体産生でHITTが生じる。複合体と結合したIgGのFc部が血小板に結合することにより、血小板からさらにPF4が放出され、血小板活性化が広範に進み、血栓化が生じる。
血小板減少、血栓症、ヘパリン注入部の皮膚壊死
治療=heparin中止、直接トロンビン阻害薬のargatroban(or hirudin, leprudin)を用いる。 もしくはfondaparinux。warfarinは血小板が15万以上に回復した後に点滴抗凝固療法と重ねてスタートする。ヘパリンは生涯に渡り再投与不可能となる。
HIT type1
非免疫応答性のヘパリンによる血小板凝集であり、ヘパリンの中止にて自然軽快する。塞栓症を伴わない。
ワルファリン Warfarin
ワーファリンは凝固因子の阻害作用と、抗凝固蛋白であるプロテインCとSの阻害作用の2つを併せ持つ。凝固因子と抗凝固蛋白の半減期の違いにより、まずプロテインCが減るため、最初の数日はhypercoagulate state になり、ワーファリン誘発の皮膚壊死を起こしうる。特にワーファリンを大量投与時、inherent protein C or S deficiency, の場合リスクが高い。(skin necrosis in breast, penis, trunk)。抗凝固導入時はヘパリンブリッジが予防に有用。
clotting factors II, VII, IX, Xを抑制し、anticoagulant Protein S and Cを減少させる。
Coumadin-induced skin necrosis in a 64 year-old female despite LMWH bridging therapy.
妊娠時のワーファリン管理
妊娠6−12週においてワーファリンは鼻や手足の低形成の催奇性がある。
例えば機械弁置換術後の妊婦
妊娠までワーファリン
妊娠第一期は低分子ヘパリン
妊娠第二期、第三期はワーファリン
分娩が近づいたら未分化ヘパリン
分娩開始後はプロタミンでリバース
出産後はワーファリン
Vit K 依存性の凝固因子
II、VII、IX、Xは肝臓で不活化の状態で産生される。これらの凝固因子はビタミンK依存性のCarboxylationされて活性化される (gamma carboxylationするために必須のcofactor)。
- ビタミンK欠乏でPTの延長、重度の場合、APTTも延長。出血時間は変化なし。
- Vit K deficiencyでの新生児出血:VitKは胎盤からの移行が悪い事、消化管の細菌叢が無い事、母乳にVit Kが乏しい事、新生児の肝臓がVitKを有効的に用いれない事から、Vit K injectionが出生後必要。
- VIIは凝固因子の中で最も半減期が短く、肝硬変の場合はまず不足する。そのため、まずPTが延長する。また、ビタミンK補充を行ってもVIIが不足している場合、改善が得られない。
- INR<4.5:ワーファリン1−2中止、 4.5<INR<10:ワーファリン中止しビタミンK1-2.5mg投与、10<INR:ワーファリン中止しビタミンK2.5-5mg投与
抗凝固療法
ヘパリン: ATIIIと結合活性化し、XaとThrombinを阻害。APTTとTTを延長。マイナス荷電。肥満細胞に存在。
低分子ヘパリン: ATIIIと結合活性化しXaのみを阻害。
Xa阻害薬 (Rivaroxaban, Apiaxaban, Fondaparinux): Xaは内因系、外因系の共通経路であり、APTTとPTを共に延長する。Thrombin Timeは延長しない
Thrombin阻害薬 (Argatroban, Dabigatoran): TTを延長。
ESRDではlow molecular weight heparin (enoxaparin), rivaroxaban は代謝されないため、出血合併症を呈する。
抗凝固療法の拮抗
ワーファリン:FFP、VitK依存性凝固因子を含むプロトロンビン コンプレックス コンセントレート(PCC)が速攻性あり。ビタミンKは肝臓での凝固因子生成に時間(12−24時間)がかかる。FFPはPCCに比べ大量投与(通常2リットル)が必要となるため、第2選択である。
ヘパリン:プロタミンが即効性のある拮抗薬。FFPはATIIIを含むため、逆に抗凝固作用が強くなる。PCCは効果がない。