なぜ論文を書くのか
論文を書くと作業は非常に神経と時間を使います。そして多くの場合は、自由時間も割いて行うことになると思います。漠然と論文を書かなくては行けないと思うだけでは、意義のある論文執筆結果は得られないかもしれません。言い換えれば、その中途半端に投資した時間は、他に使ったほうが人生として有意義かもしれません。
To disseminate novel idea
論文の本質から考えれば、斬新なアイディアを世に広める事が、論文執筆の第一義かと思います。しかし、実際の所は、Academic Positionの獲得確率を上げるため、専門医取得、更新の条件達成のため、Academic Grantの獲得のため、または現在の職務として実績を示すためという目的のために論文執筆を行っている場合が多いのではないでしょうか。
良い論文とは何か
良い論文は何かと考えたとき、主観的に”これは優れた論文である”と言うだけでは、評価(つまり、他者と比較)する事はできません。論文自体の質、その論文を書いた科学者としての質の評価するツールが必要となります。一般的に下記がその指標となっています。
論文数、(特に下記のAuthorship種類別での分類される)
- First、Co-First
- Last
- Corresponding
- Co-Author
総引用数
H-Index
Impact Factor
H-Indexとインパクトファクター
Impact Factorはその雑誌に掲載された論文が平均でどれだけ引用されるか。
H-Indexは、研究者のX回以上引用された論文がX本ある時のX値となります。近年はインパクトファクター数よりも、H-Indexを重視する傾向にあります。インパクトファクターは将来的な引用数の期待値と言ってよいと思います。若い研究者にとっては、インパクトファクター総数の方が実績を反映しやすいとも言えます。
このように考えると、引用数がこのアカデミック界の通貨といって過言ではないと思います。引用数をいかに稼ぐか。よいジャーナルに通す事は、得られる引用数の期待値が高い事を意味します。引用が多い論文が、多くある事により、H-Indexがあがることとなります。つまり、研究者が、質の良い研究論文をどれだけだしているか、質と量どちらもバランスよく重視されているということになります。
H-indexの価値とは?
ちなみにH-Indexを10とるためには、被引用数が10の論文を10本書く必要があります。被引用数が10というのは下記グラフから上位10%の論文である必要があると言うことです。これからもH-Index10の価値がどれくらいかと言うことが想像できます。
教授戦の時の論文数
では日本の教授戦にはどれだけ論文数が必要なのでしょうか?おそらく一定のラインを超えれば、あとは選考委員会の優劣の判断なのだと思います。日本の外科系教授の実績をWeb of Scienceから引用してみました。トップクラスの先生だと海外、日本もおよそ同じ程度の実績(H-Index60程度)のようです。ノーベル賞クラスだと100程度と恐ろしい数字になっています。海外の准教授・助教授スタッフクラスだと日本の教授レベルに学術実績が蓄積できている事も読み取れます。
日本人ノーベル医学賞
H-Index 90 総引用数 66000 原著170
H-Index 130 総引用数 72000 原著480
日本
帝大教授A H-Index 56 総引用数 13000 原著 680
帝大教授B H-Index 28 総引用数 2100 原著 100
国立地方教授C H-Index 10 総引用数 250 原著 37
私立教授D H-Index 24 総引用数 2100 原著 138
私立教授D H-Index 13 総引用数 550 原著 50
准教授ー講師
准教授B H-Index 9 総引用数 290 原著 60
市中病院部長
H-Index 14 総引用数 440 原著 30
H-Index 4 総引用数 50 原著 7
海外
研究の第一線の教授だとH-Index 60程度にも
教授A H-Index 60 総引用数 15000 原著 225
US教授A H-Index 24 総引用数 2600 原著 80
准教授B H-Index 30 総引用数 3600 原著 73
准教授B H-Index 20 総引用数 1400 原著 73
US助教授 H-Index 17 総引用数 1000 原著 38
US助教授 H-Index 5 総引用数 100 原著 38
US助教授 H-Index 7 総引用数 230 原著 34
若手 H-Index 9 総引用数 180 原著 15
若手 H-Index 3 総引用数 130 原著 17